江戸は質素で資源の少ないエコ社会でした。着物を着古して破ったり穴を開けたりしてしまった場合にも、接ぎ布を当てるなどの針仕事が必要だった。ほつれた部分の繕いや補強も、そして寒さ対策のための綿入れやその逆の綿抜きもすべて家庭内で行うので、エコはおいておいても家族の衣生活の充実度は主婦の腕にかかっていた。大人用の着物を夜着や子ども用の着物に仕立てたり、おむつや雑巾に作り変えたりというリフォームも、布の貴重なこの時代には当たり前で、針と糸と裁縫技術は家庭になくてはならないものだった。 都会暮らしの人よりも布の人手が困難だったのが、農民や漁民だ。忙しい作業の合間を縫って手織りで衣類を調達していたからだ。そんな貴重な布地を少で染めることによって布を強くすることができるのだ。また、農作業などで擦り切れやすい部分に当て布をし、それを少しでも見栄えよくしようとしたのが刺子だ。そのほか、当て布をするときも出来る限り綺麗に見えるような工夫をしたり、ボロ布を細く断ってそれを織り込んで布地を作ったり、というさまざまなやりくりが行われていた。すべて一針一針手で縫い上げる作業は、夜の明かりの十分でなかったこのエコ時代にはとても大変なものだった。