自然とエコな生活を送っていた江戸の庶民。
一般庶民が新しい着物を手に入れる機会は本当に少なかったが、購入するときは反物のまま入手するのが一般的でした。それを着物の形に縫い上げるのは家庭の主婦の仕事でした。そのようなわけで、女子は嫁入りするまでに裁縫の技術を習得するのが当たり前でした。狹い家に嫁ぐのにたいした嫁入り道具があったわけではないですが、裁縫箱はなくてはならないものでした。裁縫が必要になるのは、新しい反物を購入するときだけではありません。古着屋で着物を購入する際も、毎回寸法がぴったりのものを探し出せるとは限りません。
古着を買った後、縫い目をほどいて裁断したり継ぎ足したりして調整し、また縫い直すということも日常茶飯事でした。このため、縫い目の柄が合っていないことも決して珍しくはなかったのです。ひどく汚れてしまった着物は縫い目をほどいて洗わなければならなかったので、この場合にも縫い直しが必要でした。自然とエコになっていたのです。