井戸ポンプを後悔なく選定するためには、まず井戸の物理条件を正確に把握することが不可欠であり、具体的には全揚程を構成する「井戸深さ」「静水位(水面高さ)」「動水位(揚水時水面)」「揚程損失」を順に測定して数値化する必要がある。井戸深さはケーシング最底部までの距離を指し、巻尺先端に真鍮オモリを付けてゆっくり降下させ、底に触れた瞬間のテープ目盛を読み取る方法が最も簡便で、測定中にオモリが泥に埋没しないよう十秒程度静止して沈降を待つと正確性が高まる。静水位は揚水を行っていない状態での水面高さであり、電極式水位計を垂直に降ろし導通ランプが点灯した位置のテープ値を読むか、金属オモリに吸水検知パテを帯状に塗布して水面接触で色変化する箇所を確認する方法もある。次にポンプ仮設で十〜十五分間連続揚水し、動水位を測定して井戸の実質的な吸込高さを把握するが、ここで待機圧力計を併用してモーター負荷と流量変動を同時計測すると後のポンプ選定が容易になる。吸込側配管では長さ一メートル当たり約0.1mの摩擦損失、吐出側ではエルボやバルブ一箇所につき0.3〜0.5mの局部損失を参考値として加算し、静水位から動水位までの水位低下幅(揚水低下)に配管損失と所要末端圧(住宅給水なら約20m)を合算したものが必要全揚程となる。例えば井戸深さ20m、静水位10m、動水位13m、配管摩擦3m、末端圧20mなら全揚程は43mとなり、仕様表で全揚程45m・所要流量毎分30Lのポンプを選定すれば安全率を確保できる。なお浅井戸ジェットの場合は吸込限界が概ね8m前後のため動水位がそれを越える場合は水中サブマーポンプを選択するしかなく、フランジ径や電源容量も含めて事前に盤面図へ落とし込んでおくと工事当日の手戻りを防げる。また測定は必ず雨後と渇水期の二時期で実施し、近年増加する地下水位の季節変動を考慮して動水位が最悪値を取る時期のデータで全揚程を設定することが長期安定運転に直結する。最後に測定値と日付を台帳化し、設置後も半年ごとに動水位を再測定して数値が当初より2m以上低下する兆候が出た段階でポンプ揚程の再計算または揚水管の洗浄計画を立案すると、電力費増大やキャビテーション損傷を未然に防げる。