最新データによると、2024年度のイタチに関する全国の被害相談件数は130件で前年321件から約59%減少し、このうち駆除出動要請が80件、捕獲方法や予防策などの技術相談が50件を占めたことが協会統計に示されている。地理的な分布を見ると、相談の届出は都市近郊と水田地帯が交錯する京阪神圏・瀬戸内沿岸部・北部九州、それに首都圏西部から多摩丘陵にかけて集中し、豪雪内陸や標高の高い山岳地帯では届出がまばらという偏りが顕著である。これはニホンイタチが本州・四国・九州の平野部を中心に自然分布し、外来系統のシベリアイタチが山陽~九州北部の市街地周縁に適応して二種の重複域を形成している現在の分布図とも符合する。環境省野生鳥獣情報システム(WIS)がまとめた捕獲許可報告を時系列で見ると、2000年代前半に年18万頭規模だったイタチの捕獲頭数は2021年にはおおむね7万頭前後まで減少しており、長期的には捕獲圧が約6割縮小している一方、都市周辺の許可捕獲は微減にとどまるなど地域差が拡大傾向にあることがグラフから読み取れる。この統計と自治体ヒートマップを重ねると、①鉄筋住宅が増えて屋内営巣スペースが限られた大都市心部では実数が減ったものの、②古民家や簡易倉庫が残る外縁部ではネズミやコウモリと競合しながら侵入が持続し、③水路網と果樹地帯が連続する滋賀・京都・奈良や播磨平野では捕獲と相談の両方が上位を占めるという構図が浮かび上がる。また、外来シベリアイタチは対馬や伊豆諸島、北海道周辺離島など導入地で局所定着し、在来小型哺乳類や昼行性トカゲ類の捕食圧が問題視されているが、これら島嶼部では農作物より生態系影響が相談件数の主題となる点も本土と異なる。まとめると、相談件数は直近で減少に転じたものの、捕獲許可統計が示すとおり捕獲個体数自体は依然数万頭規模で推移しており、とくに在来種と外来系統が重なる西日本の平野部と首都圏郊外が被害ホットスポットとして残存している。したがって最新マップで赤色クラスタを示す地域では、配管径40mm未満の換気口閉塞や金網封鎖、果樹の夜間ネット囲いといった建物・農地側の恒久対策を先行しつつ、相談窓口との連携を密にして捕獲が必要なケースを迅速に識別する運用が引き続き重要になる。