トイレが流れないときは原因を紙・異物・尿石に切り分け、越水させない配慮を最優先にしながら安全な手順で復旧を試みるのが最短だ。まず止水栓を軽く締め電源付き便座はプラグを抜き、便器まわりを養生して縁下3〜5cmまで水位を静かに減らす。この準備ができたら紙起因の詰まりから着手する。洋式ならフランジ付ラバーカップを排水口へ垂直密着し、ゆっくり押して水封を作ってから強めに引く「押す1:引く3」を10往復、最大3セットまで繰り返すと紙の塊がサイホン側から戻って通水が回復しやすい。抵抗が残るときは重曹1/2カップとクエン酸1/2カップで発泡させ30分放置、50〜60℃のぬるま湯1Lを静かに注いで20分後にラバーカップを1セット追加すると繊維が崩れて成功率が上がる。異物が疑われる場合はレバー連打で押し流そうとせず便器用ワイヤーを使用、先端ゴムカバーを湾曲に沿わせて挿入し、押し込みより「軽く回して手前へ引き寄せる」を意識して回収する。おむつや玩具など浮力のある物は押し込むと配管の曲がりで完全閉塞を招くため禁物だ。黒い水や強い悪臭が上がる、浴室や洗面まで同時に逆流する、床や天井に染みが出た等の兆候は屋外枡や縦管のトラブルが濃厚なので、その時点で業者へ切替えた方が損害を最小化できる。尿石が主因なら便器縁裏のリム穴と底のサイホンジェット孔が狭まって初速が落ちている可能性が高く、クエン酸を含ませたキッチンペーパーで30分湿布しナイロンブラシで開口を確保、尿石除去剤を規定時間だけ使ってから小洗浄を数回回し残渣を流すと改善する。タンク式は水位線とフロート弁の開度、鎖の遊び5〜10mmを点検し、タンクレスは本体ストレーナーの清掃と試運転モードでの大洗浄2回で空気噛みを抜くと流量不足が解消する。絶対に避けるべきは熱湯投入や塩素系と酸性の混用といった危険行為、さらにビニールで便器を密閉して強圧をかける、針金やドライバーを突っ込んで釉薬を傷つけるなどの力技で、便器破損や有毒ガス、漏水事故の原因になる。復旧後は紙は一度に多量を流さず二回に分け、流せるシートや猫砂・生理用品は便器に入れない、月1のクエン酸洗浄で尿石の核を作らせない、低水量機種は大の後にぬるま湯1Lを追加して配管の滞留を減らす、年1で屋外枡の泥を除去する、といった運用で再発率は大きく下げられる。賃貸では無断分解を避け症状と写真を管理会社へ送って指示を仰ぐ、火災保険の水濡れ補償が使える場合に備え発生時刻と応急処置の記録を残す、ラバーカップ3セットとワイヤー15分で改善しなければ無理をせずプロを呼ぶ、これが2025年時点で最短かつ最安のトラブルシュートの定石である。